ずっと行きたかった長野県須坂市「仙仁(せに)温泉 花仙庵(かせんあん) 岩の湯」に2019年冬にようやく泊まることができました。
大切な人との旅行を考えたとき、いつも候補にあがるベスト宿の1つです。
ざっくりいうと
- 予約がとれないよい宿の代名詞
- チーム接客による居心地のよさ
- 温泉(名物の洞窟風呂に加え、貸切温泉が豊富でゆったり)、料理、カフェ、雰囲気、非の打ちどころなし
基本情報
公式サイト なし(唯一の公式が、日本秘湯を守る会のページ)
※少しだけど予約もできる
予約サイト なし(日本秘湯を守る会からのみ)
思い出話
写真とともにお話します。
仙仁温泉は「とにかく予約がとれない」ということで有名です。
いまから10年以上前に旅行雑誌で読んだ「Webサイトをあえて作らない」「スタッフを大切に考え年末年始を休みにしている」などの独自性に驚き、いつか行きたい注目していた宿です。
いまでこそインターネットで情報はある程度わかってしまいますが、当時は謎が多すぎる宿でした。
謎をとくためにとりあえず行ってみようとしても、予約がまったくとれないし。
宣伝はそのときから「口コミのみ」というブレていません。
実際に行ったとき、チェックアウトのときに次の予約の相談をしている人が2〜3組見かけました。
他ではなかなか見られない光景でした。
客がすべてではなく「まずスタッフの幸せをつくってこそ、客へのおもてなしができる」という点も共感します。
いまとなってはブラックな会社問題などもあり、昔ほどは新鮮に感じられないです。
でもこれを何十年も前からやっているのだから、時代の先を見る目もひと味違います。
電話での予約が基本ですが、いまは「日本秘湯を守る会」経由ですこしだけインターネット予約ができてるようになっています。
とはいえ土日祝日はまったく予約できませんが、平日なら予約がとれる日もほんの少しあるようです。
で泊まった感想。
接客、料理、温泉、情緒みんなすばらしい。
10年分の期待を胸に、ハードルを相当あげて行ったのに、もう次はいつ行こうかと考えているくらいです。
もっとも関心した点は「いろんな人にちょこっとずつお世話になる」チーム接客。
1回の宿泊で関わったスタッフ数は10人以上。
覚えているだけでも
- 駐車場から宿の入り口まで案内してくれる人
- チェックイン時にお茶やお菓子を出してくれる人(数人)
- 部屋を案内してくれる人
- 食事を案内してくれる人(数人)
- 館内のカフェにいる人(数人)
- チェックアウトを案内してくれる人
- 帰りに見送ってくれる人
- 散策中に合う人
- おみやげコーナーにいる人
圧倒的な数です。
どんな人に会っても、みんな笑顔で気持ちがいい。
接客もていねい過ぎてこっちが緊張しちゃう感じではなく、ちょうどよい距離感。
もしかしたら、接客ってコース料理と似ているのかもしれません。
ものすごくていねいな接客を1度に味わうより、ちょっとしたここちよい接客を複数にわけて味わったほうが全体の満足度は高まるのかも。
ちょっとした気持ちのよいコミュニケーションがいたるところにあり、全体の居心地のよさにつながっているのだと思います。
またその接客をベースに、ハイレベルの料理、温泉、情緒。
これはなんどでも行きたくなりますよ。
あとで本で知ったことですが、仙仁温泉は部屋が18室に対して、スタッフ60人以上いるそうです。
ざっくり1部屋に3人にいる計算。
あれだけのことをやるのだからねと納得する一方、どれだけ人件費がかかっているんだよとも驚きました。
スタッフ一人ひとり1人がマルチプレーヤーとして、なんでも効率よくやって人件費を下げているケースはよく聞きます。
でも仙仁温泉は別次元の経営のようです。
サービスがいいから値段を高くしてもお客さんが満足してくれる。
スタッフとしても1人に依存しない接客で、一般的な宿よりは休みもとりやすいのではないでしょうか。
スタッフが幸せになるからこそ、お客さんの幸せのために気持ちよく動けます。
この接客ですぐに思いつくのは、ディズニーランドの感動接客です。
どこで誰と会っても、質の高い接客。
ずっと笑顔で、話しているだけで楽しく、ていねいなだけでなくユーモアもある。
正直スタッフの顔は覚えていないが、親切にしてもらったことは心に残っています。
もうひとつおまけに思いついたのはスポーツのチーム力です。
団体競技は1人のエースだけでは競合には勝てません。
組織としての強さこそほんとうの強さで、それがもっとも高いチームが優勝できます。
仙仁温泉にもエースはいるのでしょうが、たとえエースが休みの日でも、お客さんの満足度は変わらないと想像します。
ディズニーランドと、プロスポーツチームを思い起こさせる仙仁温泉でした。
仙仁温泉で「おぉ!」と思ったポイントはまだたくさんありますが、このチーム接客にもっとも関心しました。
きっと「お客さまはどうやったら喜んでくれるか?」をずっと研究し続けていのでしょう。
それも一般の宿がかんたんにマネできないレベルで。
ここちよいコミュニケーションとはどういうことか?それを考えさせられた宿でした。
じぶんの仕事にも少しでも取り入れていきたいと思いました。
仙仁温泉は業界でもかなり研究されているはず。
おなじくらいの価格帯で、これを超える接客はあるのか、興味がわきました。
その他
温泉批評 2019 の覆面取材を読みましたが、やっぱり弱点がないって言ってた記憶が。
泊まりに行った時期にちょうど販売されていた 旅の手帖 2019年 02月号 の仙仁温泉の記事は参考になりました。